「数字は作れる」からこそ問われる、経営者の“勘”という才能
柳澤大介はマーケティングのプロであり、その豊富な知識と情報分析に基づいて「賢い経営戦略」を練り上げるスペシャリスト。安田佳生は境目研究家を名乗り「おバカな人ほど儲かる時代が来る」と断言する変わり者。
ある意味真逆な思想を持つ二人が、世の中の様々な経営戦略について独自の視点から意見を述べ合う番組が「賢い戦略vsおバカな経営」です。
読むポッドキャストでは音声番組の内容を読みやすく要約してお届けしています。
第13回は「データと勘、重要な局面で信じるのはどちら?」です。
サマリー
- 五分五分の重大な決断ほど、データでは優劣がつかず経営者自身の判断が問われる
- 前例のないサービスは売上予測すら“作れて”しまうため、数字より感性を信じる場面がある
- 意思決定の拠り所は人それぞれ。自分が売りにする強み(データ分析か感性か)を磨くことが大切
五分五分の判断こそ、経営者の仕事
安田:今日は柳澤さんからテーマをいただけるということで、どんなテーマですか?
柳澤:社長に限らず、会社員でも重大な意思決定をしなきゃいけないことってあるじゃないですか。うまくいくか失敗するか、五分五分みたいな時にすごく迷うんです。6対4くらいなら、6割の方を信じればいいんですけど。
問題は、どっちが正しいかわからず、しかも会社の業績に大きく影響するような場面。データを信じるか、自分の勘を信じるか、という話をしたくて。
安田:51対49だったら普通は51を取りますよね。データを分析して優劣がつくような判断は、社長自らやる必要はないんじゃないかという気もするんですが。
柳澤:それをひっくり返す時もあるじゃないですか。勝率は30%なんだけどリターンが大きいからこっちに行かなくちゃいけない!、みたいなケースで。基本的に勝率が1%でも高い方を選ぶ局面は、リーダーや社員に委ねてもいいと思います。
安田:本当に五分五分、もしくは50%以下だけど絶対にこっちに行かなくちゃいけない、という時。それは判断というより決断ですよ。野球の野村さんもよく、次にピッチャーが投げる球を予測すると言っていました。
データはあるけれど、その通りに投じるとは限らない。山勘でもない、自分なりの予測。それがすごく大事だと言っていましたが。
柳澤:私もどちらかというと、自分の感性を重視します。昔で言えばFacebookやTwitterが誕生したばかりの時、売り上げ予測もタラレバでいくらでも出せてしまいます。データの読み方や切り出し方も人によって違うので、結局は自分の感性で判断することが多い。
安田:私は基本的に、世の中にないサービスにしか興味がありません。それをやる時も、世の中にサービスがあるかどうか調べることすらしないんです。他の人がやっているかに興味がなく、自分の中で「これは絶対新しい」と思ったものを、新しいんだと信じてやります。
前例のないサービスに、データ分析は通じない
安田:でも柳澤さんは、仕事柄データ収集やデータ分析が生命線じゃないですか。新規事業をやる時はどうしているんですか?
柳澤:自社で新規事業を立ち上げる時は、失敗しても責任を取るのが自分なので、データ分析はさほどしません。自分がやりたいかどうかだけで判断しています。ただ、支援先の場合はすでに投資を受けていて上場の約束があったりするので、そこはかなりロジカルに進めます。
安田:私もいろんな会社の新規事業や商品開発を長年仕事にしていますが、お客さんの新規事業は、お客さんがお金と時間をかけてやろうと思ってくれないと進みません。なので、面白いんじゃないかというブレストやコンセプト作りはやりますが、実際にマーケットを調べて投資するかどうかの判断は先方に委ねています。
多くの場合、ちょっとやってみようかと言っても、反応が悪いとすぐ辞めてしまう人も多くて。結局、自分が考えた事業だったら面白いと思って自分でやるじゃないですか。人が考えた事業は、勝算がないと続けるのが難しい気がします。
人を巻き込む時は「数字」も武器になる
安田:さっき別件でミーティングをしていた新規事業の話ですが、私が自分でやるんだったら、うまくいくかわからなくても面白そうならいくらでも突っ込んでやっちゃいます。
ただ、お客さんのご依頼や他の方を巻き込む時は、ある程度売上予測や成功確率を出さないと巻き込めません。自分のことなら勘でいけますが、他人を巻き込む時は、自分にもお客さんにも納得して背中を押すためのデータを、無理くりにでも集めますね。
柳澤:まあ、そうあるべきなんでしょうね。私も人を巻き込む時は数字を出しますが、タヌキの皮算用じゃないですけど、新しい事業の数字っていくらでも作れちゃうんですよ。こういう数字でいきたいな、もしこうなったらこんなハッピーな未来もあるよね、というふうに。
安田:最近だとAIがすごいじゃないですか。5年後の未来がこうなることが概ねわかっていたとしても、売り上げ予測なんて立てられなかったと思うんですよ、以前は。世界や社会にすごく影響を与えるようなものって、計算できない、全く前例がないことなんです。
柳澤:数字を出すことにそもそもあんまり意味がないということですか?
安田:その人の立場と、やろうとしている商品やサービスによると思うんです。柳澤さんに仕事を依頼する人は、ちゃんと分析して責任を持って提案してくれるという前提で依頼していると思います。逆に、私に仕事を依頼する人が、私がものすごくデータを調べて理屈で提案したら、がっかりすると思う。そんなことはいいんだよ、と。
だから多分、売りにするものが若干違うんです。私は自分の感性や美意識、「そんなことで商売できないよ」って言われるようなもので商売しているので、そっちを磨く方に力を入れています。
もう答えが出ないまま、どうやって経営者は意思決定するんだって聞かれたら、人それぞれっていうことでしょうかね。本日は以上にしたいと思います。どうもありがとうございました。
柳澤:ありがとうございました。
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